無い物ねだり
「ああ、クールなスリーポイントシューターって言われているくらいだもんな」
「どんなピンチの時も少しも表情を変えず、スリーポイントシュートを撃つ。並の精神力じゃできねぇ」
「わぉ、クール!」
「かっけー!」
「だから、かわいくねー!」
「言えてる」
進藤の言葉に大橋が大きく頷いた。新山はどうしようか迷ったが、やむなく頷いた。
(仲間ハズレはイヤだ)
そんな単純な思いから。しかしコレが、さらなる涼のバッシングにつながった。
「あんな心の冷たい女、マジで近付きたくねぇ」
「俺、隣のクラスでよかったぁ」
「いいなぁ、大橋。俺、漆原に見られたら、次の授業で凍っちまうかもしれないぜ」
「おう、そうだ。氷の像みたいにコッチンコッチンに固まっちまえ」
「なんでそんな冷たいこと言うんだよ」
「コチコチに固まっているところを溶かしてやったら、俺がヒーローになれるだろ。『キャー、大橋君。頼りになるぅー』って」
「お前の名誉のために、俺を凍らせるってのか。ひっでぇな!」
今度は田口が口先を尖らせた。進藤と似たり寄ったりの反応だ。
(類は友を呼ぶってか?)
新山は何となく思った。
 すると、田口が思わぬ事を口走った。
「でもよ、そんな女子でも好きになる男っているのかな?」
新山は、ドキッとした。
「ありえないね。もしそんな奴がいたら、頭おかしいって」
「だよなぁ。心がコチコチに凍っている女なんか、同じ空気吸うのもイヤだもんな」
「もしコクられたら、どうするよ」
「フるに決まってんだろ」
「泣かれるかもしれないぜ。『そんな事言わないでぇっ!』って」
「それは、ぜっっっっっっったい!無い。漆原はきっと気ぃ強いぜ。逆にグーでパンチされるよ」

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