無い物ねだり
「はい、よろしくお願いします!」
「お願いします!」
キャプテンで三年生の村井薫がショートヘアの頭を下げると、残りの部員全員が頭を下げた。一気に緊張感が高まり、気合いが入った。
 まず最初に、三年生、二年生、一年生の順に二人一組で並ぶと、村井のかけ声で長方形のコートをランニングした。五分ほどで終えると体をほぐすストレッチをし、フットワークをこなした。
 相手を替えて再び二人一組になると、一人が敵役になり、もう一人はドリブルをしながらゴールへ向かった。ゴールの前まで来れば、止まってシュートを撃つドリブルシュート、次に飛んでシュートを撃つジャンプシュートをした。十分休憩を取って体を休めれば、二人一組でコートを縦に走りながらパス練習をする2メン、三人一組で行う3メンをこなした。
 私が今回相棒に選んだのは、隣のクラスにいる戸塚恵。彼女は小学生時代、違うミニバスケットチームにいて、地区大会で全道行きの切符を争ったライバルで実力者だ。中学に入ってさらにレベルは上がり、今は準レギュラー入りしている。ただ実力は、もっともレギュラーに近かった。
(今日もとことんやろうじゃない。5対5で相手チームになるのを楽しみにしている!)
練習中、試合に出ているような気持ちでプレーした。戸塚も同じ気持ちらしく、気合いの入ったプレーをしていた。
(いいね、そうこなくちゃ面白くない!)
ライバルがいてこそ自分も成長する。私はワクワクしながらジャンプシュートを決めた。
 その熱は収まる事なく、次の練習へと持ち越された。
「そろそろ5対5をします。今日はAチームに村井さん、井川さん、佐々木さん、中山さん、漆原さん、Bチームに三好さん、山之内さん、秋山さん、田中さん、戸塚さんでいきます。名前を呼ばれた人は速やかにコートへ入って下さい」
「はい!」
私と供に名前を呼ばれた部員が、小走りで各ポジションへ入る。戸塚は希望通り相手チームになった。私はガゼンやる気が出た。目が合うと、戸塚はヤル気マンマンな視線を向けてきた。もちろん私は返した。


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