無い物ねだり
意気消沈して椅子に座ると、トホホとため息をついた。部屋の入り口すぐ脇に貼った彼の特大ポスターを振り返って見れば、『ゴメンね』と謝った。それほど事態は深刻なのだ。
 予定通り午後七時まで勉強し、夕飯を母と一緒に三十分で食べ終わると、自分で使った食器を洗った。洗い終わると父はまだ仕事から帰らず母は夕飯の後片づけがあるので、最初にお風呂に入った。お風呂も三十分ほどで上がると、さすがにドッと疲れが出たので、一時間ほどバラエティー番組を見て休憩した。
 午後九時。再び机につくと、今度は社会の勉強に取りかかった。疲労のあまりグッタリしていたが、もう少しガンバらねば、明日にしわ寄せが来る。眠い目をこすり教科書とノートを開くと、午後十一時頃まで勉強して寝た。その夜は一度も起きることなく、翌朝午前六時までグッスリ眠った。
 起きると頭はボーッとしていた。慣れない事をしてひどく疲れたらしい。カーテンを開け眩しいばかりの朝日を浴びても、頭はシャキッとしない。壁に寄りかかったまま、部屋の入り口脇の壁に貼った錦屋アキラ君のポスターをボーッと眺めた。
 十分くらいそうしていると、ようやく目が覚めた。
「そろそろ行くかぁ」
ダラダラと起きあがると、ダラダラして赤いTシャツと白いハーフパンツに着替え、白い帽子を持って一階に下りた。洗面所へ行くと顔を洗って化粧水と日焼け止めを塗り、髪をブローした。
 すると、ようやく目が覚めた。
 台所で朝食の支度をしている母に『おはよう』と挨拶をすると、気合い十分で玄関へ行きランニングシューズを履いた。
 外に出ると、抜けるような青空にギラギラ輝く太陽が浮かんでいた。
(あっつーい!)
キャップを被っていても、まだ頭は熱い。腕や足もアスファルトの照り返しを受け、すぐ日焼けしそうなほど熱を持つ。まだ午前六時過ぎなのに、溶けてしまいそうだ。
(でも、負けない。さあ、ランニングするぞ!)
部活が出来ない間、体力くらい維持しようと思った。休んでいいのは週に一日だけ。それ以上休むと体がナマってしまうのだ。




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