無い物ねだり
「あっれー片平さん。どうしたの?」
親友の一人である進藤が目をキラキラさせながら聞いた。美少女を間近で拝めて嬉しいらしい。
「今日はバレエのレッスンが無いから、勉強会に混ぜてもらおうと思って」
「でも、片平さんは混ざる必要無いじゃん。テストをやったら、いっつも上位五位以内に入っているんだもん。家でチャラーンと復習すれば、僕達とやらなくてもオッケーなんじゃない?」
すると片平は新山の肩に手を置き笑った。アイドル並のすばらしい微笑だ。
「新山君達と一緒に勉強したかったの。新山君、いっつも楽しい話しをしてくれるでしょ?一人で黙々とやるより、ずっと良いと思ったの。ね、いいでしょ?」
「もっちろんだよ!片平さんみたいな可愛くて頭の良い子と勉強したら、僕達もレベルアップアップじゃーん!」
「進藤、お前がオッケーすんなよ。俺たちの意見、聞いていないだろ」
新山は呆れ気味だが、ようやく言った。
「えー、イイじゃん。新山ぁ。おまえも赤点ギリギリだって言ったじゃん。バカばっかりでやるより、天才美少女様にお教え頂いた方が、絶対効率が良いって」
「やだぁ、天才美少女だなんて!」
「まあ、なぁ…」
「じゃ、決定!さ、机をくっつけようぜぇ。その方が片平さんのノートがよく見えるから」
「おい、進藤。だから、俺たちの意見は聞かねぇのかよ!」
友達の一人矢部が不服そうに言った。しかし進藤は片平の顔を見るのに夢中で『いいじゃん、いいじゃん』と流してしまった。
「やっほー!今日は楽しい勉強会になるぞ!」
進藤はウキウキしながら、矢部はあきれながら机を移動させた。だが新山は今イチな様子で、仕方なく机を移動させた。そして移動し終わっても困惑した様子は変わらず、片平が来るまでの軽さはすっかりなりを潜めてしまった。
「片平って女子、マジ嫌な感じ!」
「本当。ちょっと可愛いからって、ブリッコしてんじゃないよ!」

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