無い物ねだり
新山はますます困った顔になり、視線を泳がせた。片平は目尻に涙をにじませると、通学バッグを持って教室を飛び出した。彼女の細い背中は、とても寂しそうだった。
 しかし、新山はけっして後を追おうとしなかった。一人じっと考え込んでいた。
 そんな事態になっているなど、私は少しも知らなかった。
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