無い物ねだり
予想通りの展開だ。ただ高飛車な態度でいる彼女の口から出ると、ものすごくカチン!とした。あまりにもカチンとしたので、この場面を録画して学校中の男子に見せ、是非を問いたくなった。きっと全員ドン引き。人気ガタ落ちだろう。さすがに強気の片平も、落ち込むに違いない。
(いや、もしかしたら落ち込まないかも。反対に逆ギレして、『自分がいかにかわいそうか』についてベラベラしゃべるかもしれない。そして男子達は彼女のかわいさに免じて、許しちゃうんだろうな。ヤレヤレ…)
 私はウンザリしつつ、片平を見た。
「あの、私もできるなら関わりたくないの。でも新山君が私にひどい事をするから、反撃と言う形で関わらずにいられないの」
「無視すればいいでしょ。何をしても無反応なら、つまらなくてやめるかもしれないから」
「逆にもっとヒドくなったら困るでしょ。だから、無視なんてしない。泣き寝入りなんて絶対しない」
「転校すればいいじゃない」
「は?」
「学校なんて全国に数え切れないほどあるでしょ。ここにしがみつく必要なんてないわ」
「この学校のバスケット部に惚れ込んでいるの。他の学校でするなんて考えられない」
「あなた、頭はバカだけど、バスケはすごい上手なんですって?」
(『頭はバカ』だけ、よけいよ!)
「あなたが入学してから、うちの女子バスケ部は地区大会でほぼ負けなしの上、全国大会上位入賞常連校になった。今までは、地区大会で準決勝へ行くのがやっとだったのに」
「みんなでガンバったから勝てたの。私一人の力じゃないわ」
「本当にそう思っているの?心の中じゃ、『アタシがいるから勝てた』って思っているんじゃない?」
「片平さん、すごい根性曲がっている。なんでそう全て悪い方へ考えるわけ?」
「悪くないわよ。事実よ。私、頭良いから、心の中まで読めるのよ」
片平はキッパリと言った。私を人差し指でさしてまで。私は胸焼けするほどウンザリした。
(どういう育て方をしたら、こんな風に悪い意味で自信満々な娘が育つんだ?)



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