無い物ねだり
「正しい意見ね。さっきも言ったけど、私は泣き寝入りするのが大嫌いなの。片平さんが呼び出していなかったら、私から呼び出して方をつけるつもりだったし」
「ずいぶん強気ね」
「そうよ、うらやましいでしょ」
「うらやましくなんかないわ。顔がブスなら性格もブス。あんたみたいな性悪女、消してしまいたい」
「あなたの方こそ、性格悪いんじゃない。いくら私がニクいからって、そんなヒドイ言葉ばかり吐いていると、せっかくの可愛い顔も台無しよ。私に暴言浴びせている時の顔、まるで般若だもの。信じられないくらいドン引きするわ。なんなら愛しの新山君に一回見てもらったら」
「なんてすって…」
「怒っているところを見ると、今の自分の顔がどれだけひどいか良くわかっているみたいね」
「ひどくなんてないわ。私の顔は可愛いんだから。みんな、そう言ってほめてくれるもの。新山君だって、ほめてくれるわ」
「だ、か、ら!私に暴言吐いている顔がひどいって言っているの。普通にしている時の事は言ってないって!」
「よくもそんなヒドイ事が言えるわね」
「ヒドイ事言ってんのアンタでしょ!はっきりいって、さっきから無茶苦茶な事ばかり言ってる。恐喝よ!」
「恐喝なんかしていないわ」
「だったらここに新山君を連れてきて。私は親友を一人連れてくるから。それで彼の前でもう一回、同じ表情で同じ事を言って。そうしたら、どっちの言い分があっているかわかるわ!」
「いやよ、連れてこないわ!私は間違った事言ってないもの!」
「いいや、言って…」
突然、バチン!と鋭い音をたてて片平の手が私の左頬を叩いた。叩かれた私の左頬はジンジンするほど痛かった。力一杯叩いたらしい。
 私は異常なほど勘違いしている彼女に、ひどくイライラした。こうなったら殴り合い覚悟で叩き返してやろうと思った。痛い目に遭わせないと目が覚めないと思った。
 




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