無い物ねだり
(チクショーッ、チクショーッ、チクショーッ!いつか見返してやる。いつか見返してやる!美人は無理だけど、それなりにキレイになってやる!油断していたら、痛い目にあうんだからねっ!)
キッと目をひらけば、手を振り大股で歩いた。怒ったらとてもおなかが空いてきた。このままでは練習ができないので、早急に腹ごしらえをするため教室へ行こうと思ったのだ。
 しかし、ふとあることに気づき、ドキッとした。
(モメていたの、部員のみんなに聞かれていないかな?かなり大声でしゃべっていたから、確率高いよね…だとすると、口止めしなきゃヤバイ。恩田先生にバレたら大目玉くらっちゃう!)
教室へ行くのを止め、急いで体育館の出入り口から中へ入った。そのまま更衣室へ行けば何事もなかったかのように近付き、それとなく『モメていた声を聞いたか』と尋ねた。すると案の定、バッチリ聞こえていたと答えた。私は慌てて口止めした。
(よかった、これで安心して部活ができる!)
ホッと一息つくと、安堵して教室へ向かった。
 しかし、悪事はいつかバレるものである。
 私はこの後、人生最大のピンチを迎えようとしていた。
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