無い物ねだり
 昨年私を苦しめた折原は、今年まだ二年生。三月末に行われた都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会の選抜メンバーにノミネートされたほどの実力で、私もチェックをいれていた。顔つきは精悍さを増し、昨年のあどけなさは微塵もない。それだけ練習に励み、自信がついたと言うことだろう。
 しかし私も一年間必死に練習し、腕を上げた。おかげで一回戦目は40点差で、二回戦目は32点差で勝利し、決勝へ向け弾みをつける事ができた。
「よかったー!これでT大附属との一戦にまた一歩近づいたね」
「うん!」
「あ、そうだ。午後二時五十分からやる第四試合でT大附属が戦うのを見れるんだよね?」
「そう。やっと同じ会場だから見れる」
「本当。昨日は別会場だったし、今日は同じ時間に一回戦目の試合していたから、見られなかったもんね」
「ウワサの帰国子女二人を見たくてウズウズしていたのにねぇー」
「そうそう!」
メンバーは大いに盛り上がった。必死に練習してきたので、昨年のT大附属に勝つ自信はあった。しかし、今年加入した新メンバーの実力がすごければ、またも負けてしまうかもしれない。少しでも多くの情報が欲しかった。
―今年であたるのは三回目。絶対勝ちたい。三度目の正直を実現したかった。―
「急いで、試合始まっちゃうよ!」
私達は急いで荷物を片づけると、ギャラリー席へ向かった。移動している途中、アリーナへ入ってきたT大附属とすれ違った。
(あっ!)
だが、どの選手が噂の帰国子女かわからなかった。十一人いたメンバーのうち、やはり三分の二が知らない顔だったのだ。
(昨年三年生だった選手は卒業したし、部員が百人もいるんだもんね。ちょっとでも成績が悪いとすぐ出場メンバーからはずされるのかもしれない)
過酷な生存競争を目の当たりにし、少しショックだった。また同時に、生存競争を勝ち抜いて出場メンバーに入った彼らの顔は、誇らしく輝いているように見えた。
 ギャラリー席へ行くと、すでに我がチームのメンバーが特等席を確保してくれていた。













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