Rusting rail <短>
ずっと居て欲しいなんて言わない。
居てくれるとも思ってない。
……ほんの少し、夢見ただけ。
アナタの隣で、いつまでも歩いている背伸びした自分を、思い描いてただけ。
少し強引に、グズつく私の手を引いて、
アナタの住む、光で溢れた世界へと連れ出してくれる……
……なんて。
淡い期待が、うっすらと私の心を覆っただけ。
――次の日。
いつもの場所にアナタは居ない。
アナタの体も、
そこにあった面影さえも……
何もかも、このくたびれた列車が運んでいってしまったから。
でも、こんな時代遅れの列車では、私の想いまでもは連れ去ってくれなかったみたいで……
暖かな手の温もりや記憶だけが、この胸に残る。
アナタとの時間に、痛みなんてなかったはずなのに。
……まるで、傷跡みたいに。
草が枯れて、虫の鳴き声が聴こえなくなる冬になれば、
この手は凍えて、アナタのくれた暖かさなど、私は忘れてしまうのだろう。
アナタの、どこか影をまとう笑顔だって、
毎日が過ぎるたびに、新しい誰かの笑顔へとすりかわっていく。
何事もなかったかのように、私は私の居るべき場所へ戻るんだ。
煌きのない、平坦に流れる時間へと。
だけど……
生まれて初めて知る、哀しみでもトキメキでもないのに、胸を締め付けて離さない、
“切なさ”という、不思議な感情を携えて――