Rusting rail <短>
“愛してる”
“いつまでも、ずっと”
空の言葉が宙を舞う。
初めて受け取る甘美な言葉は、遮るものが何もないおかげで、
すぐにどこかに飛んでいってしまった。
私は、その消えいく言葉の破片をかろじて掴み、そっと胸の隅に隠した。
アナタの囁く言葉に、私は何も答えなかった。
私の裸の唇に、そんな洒落た言葉はまだ、似合わないから――
そんな中、幻影のような時間のタイムリミットは、隠れることもせず、
私の中の緩やかな衝動をくすぶりながら、足音を立てて近付いてくる。
明日から、もう二度とこの寂れた駅で、古びた列車を目にする時は訪れないのだということを、私はアナタに教えた。
何気なく口を滑らせてしまっただけのような……
心のどこかでは、アナタに伝えなきゃいけないと、わかっていたような……
そんな気分だった。
アナタはその言葉に、沈黙を伴いながら、
どこまでも続いていく、茶色く錆びたレールの先を見つめていた。
私は何でもないような振りをして、少し高い位置にある瞳を覗いてみると、
アナタは私の瞳を覗き返して、柔らかく微笑む。
アナタはもっと何でもない顔をして、私たちを繋ぐ手は強くなった。
アナタの視線の先には、このレールが繋ぐ、ずっとずっと向こうが見えていたんだ。
でも、私には見えない。
だって、私はその景色を、一度もこの目で見たことがないから……