俺だけの愛しい妹
あたしたちは電車に乗って、もとの駅に帰ってきた。
「じゃぁ、バイバイ」
皆と別れて、家路に向かった。
寒いなぁ……
夜になるとやっぱ冷え込むなぁ。
そう思ったときだった。
「菊地!」
「田口くん!?」
家が反対方向の田口が、なぜかあたしの目の前にいる。
「送ってこうと思って。ほら、危ないし」
ここまで来て、断るのは申し訳ない。
あたしは素直に
「ありがとう」
と言った。
2人で肩を並べて、なにも会話もなく歩いていく。
とくに話すこともなく、ただ歩くだけ。
だけど、なにも不思議な気はしなかった。
なんか、
心地いい。
「あたし、家ここだら」
「おう」
「ありがとう。……バイバイ」
「あ、菊地!」
家に入ろうとするあたしを、田口は止めた。
「ん?」
「あ、いや……風邪ひくなよ!!」
あたしは少し不思議に思ったが、「ありがとう」だけ言った。