俺だけの愛しい妹
頬を涙が伝った。
「泣かないで、結菜」
悲しそうな顔するお兄ちゃん。
それでも流れる涙は、白いシーツへと染みていく。
「ごめんね、これも“愛”なんだ」
愛?
きっと、普通の恋人がするのなら、“愛”ですまされる。
だけど、あたしとあなたは“兄妹”。
兄妹愛じゃなくて、
お兄ちゃんはもうあたしのことを、妹として見てない。
一人の女として、あたしを見ている。
その時点でもう、“愛”は狂っていた。
「俺はお前が愛しいんだ」
そっと頬を流れる涙をすくう。
「結菜も、俺のこと『好き』だって言ってくれたじゃないか」
いつの話だ。
まだ、幼い頃。
確かにあたしはお兄ちゃんに『大好き』と言ったかもしれない。
だけど、それは“兄”として。
兄妹としての感情。
なのに、お兄ちゃんはそう受け取っていなかったの??