俺だけの愛しい妹
授業中も、休み時間も。
あたしは『昨日』のことで頭がいっぱいだった。
下校の時間に近づくにつれ、迫る恐怖。
帰りたくない。
今までだったら、帰ったら待っているのは、おしいご飯とお兄ちゃん。
でも、今はそれが怖かった。
お兄ちゃんと二人きりの家。
マンションなら、なにかあれば助けを呼べる。
しかし、一軒家。
結構な大きさの家は、叫んでも助けが来る確立は低い。
あぁ、なんでこんなことを考えているんだろう。
ただの家なのに。
父母が残してくれた家なのに、今は“恐怖”の塊でしかなかった。
ついに、きてしまった下校時間。
なかなか帰ろうとしないあたしを、芽衣ちゃんは不思議そうに
「どうしたの?帰らないの??」
聞いてきた。
本音は、『うん』と言いたい。
だけど、怪しまれる。
だからあたしは
「ううん、帰ろっか」
そう言った。
言うしかなかった。
帰らないと、なにがあるかわからない。