俺だけの愛しい妹

冗談でも、嘘でもない。

“本気”の声。

「い、今着替えてるから、待ってて」

「そう♪じゃぁ、すぐ来いよ」

優しい音色。

さっきの声とはまったくの別人のようだ。

ベットから飛び上がり、急いで着替えを済ます。



リビングのドアを開けるのに、勇気いる。

「ほら、椅子に座って。食べるよ」

並べられた夕食は、どれもおいしそうだった。

いつもなら、楽しい気分で食べるだろう。

だけど、

あたしの向かい側に座るのは、『お兄ちゃん』。


それだけで、“楽しさ”が“恐怖”と変わる。

「おいしい?」

その質問に

「うん、おいしいよ」

素直に答えた。

おいしい筈のご飯も、味がわからない。

薄いとか、そういう味の具合とかじゃなくて、頭が夕食に集中していない。

集中しているのは、目の前にいる人だけ。


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