俺だけの愛しい妹
しかし、そんな簡単にはいかなかった。
「おい、どうしたんだよ!」
うるしさい。
「なんか言えよ!」
黙って。
「おい菊地!!」
あたしは口を開くことなく、目で『なに?』というのを訴えた。
やっと落ち着いた田口が
「なんでなにも言わねーんだよ」
言わないんじゃない。
言えないんだ。
そんなこともあたしは言えず、ただ俯くしかなかった。
「なにか、あったのか?」
優しく、切なそうに聞く田口。
ここでなにか言えばいい。
お兄ちゃんもいないし、喋ればいい。
だけど、昨日の出来事が頭の中でフラッシュバックする。
精神的に言うことが出来なかった。
優しい田口の言葉も、今は“迷惑”でしかなかった。
「もう、いいよ」
そう言って去っていく。
ごめんね。
全部、あたしがいけない。
臆病者。
どうすることもできないんだ……