俺だけの愛しい妹
結局、学校にいる間男子とは一言も喋らなかった。
先生はどうしようもなく喋るしかなかったけど。
「結菜、今日田口と一言も喋ってなかったじゃん。なんかあった?」
田口だけじゃない。
男子全員だよ。
芽衣ちゃんに、心の中で言う。
「ううん、特になにも。……それよりさ、今日芽衣ちゃんの家行っていい??」
質問の答えを曖昧にして、あたしが逆に質問をした。
「え?大丈夫だけど。いつもすぐ帰るのに、珍しいね」
お兄ちゃんが怖くて家に帰りたくない、なんて言えない。
今まで、“仲のいい兄妹”だったんだから。
怪しまれる。
「だって、たまには遊びたいじゃん?」
よくわからない理由を言い、なんとか芽衣ちゃんの家に行くことになった。
すぐに家に帰らなかったら、きっとお兄ちゃんは怒る。
怒れば、待ってるのは“拷問”。
もう後戻り出来ない。
「おじゃましまーす」
「父親も母親も仕事だよー」
芽衣ちゃんの部屋へと向かう。
久しぶりだなぁ……
それからしばらくあたし達は話した。
笑ったりして、その間はなにもかも忘れられた。
しかし
「結菜、家に帰らなくていいの?」
その言葉で現実に引き戻される。
時計を見ると、7時を回っていた。
今帰ったら、なにされるかわからない。
「芽衣ちゃん、泊めて」
その言葉に芽衣ちゃんは驚いている。
「どうしたの?お兄ちゃんはいいの??」
「いいの。だからお願い!!」
あたしはすがりついた。
その姿を見た芽衣ちゃんはOKしてくれた。