俺だけの愛しい妹

学校へ出る際、お兄ちゃんの一言が離れなかった。

『ほかの男と喋るなよ。見てるからね』


見てるからね―――…

実際お兄ちゃんに見られてないとしても、それと同じことが待っている。


数人の人があたしを見張っている。

何人かなんてわからいし、当然誰かもわからない。


同じクラスかもしれないし、違う学年かもしれない。

はたまた、先生だなってことも……


いや、ありえない。

そんなこと。

考えないほうがいい。


だけど、体がもつだろうか……

精神的にも、もう崩れ始めているというのに。

唯一の落ち着く場所、学校までもが“恐怖”へと変わっていく。



「結菜ぁ!おはよっ!!」

芽衣ちゃんがあたしの肩を叩く。

「あ、芽衣ちゃん……。おはよ……」

「どうしたの?なんかあった??」

あたしの異変に気がついたのか、顔を覗き込む。


言いたい。

全部全部言ってしまいそうになる。

だけど、そんなこと信じるか……


< 64 / 98 >

この作品をシェア

pagetop