俺だけの愛しい妹
着いてしまった。
嫌でも着いてしまう。
いっそのこと記憶喪失になってしまいたい。
取っ手を握り、ドアを開く。
「た、ただ……いま」
言いたくなくても言わなければ。
「あ、結菜お帰り」
リビングからお兄ちゃんが出てくる。
「着替えて、くるね」
そう言ってお兄ちゃんの横を通りすぎようとしたときだった。
「……!?」
後から別の体温が伝わってくる。
あたし、抱きしめられてる。
今更、そんなことどうってことないのだが。
急すぎて体がかたまってしまう。
襲われる……!?
「ねぇ、結菜。あとで話しがある」
恐怖に満ちたその声で、あたしの耳元で囁かれた。
腕から開放され、お兄ちゃんはリビングへと戻っていった。
話し、ってなに?
もしかして、先生のこと?
だけど、あれはしょうがないことだし。
ドクンドクンと激しく心臓が鳴り響いた。