俺だけの愛しい妹

「じゃぁな、菊池。彼氏いたんだな」

「田口っ……」

呼び止めようとしたが、お兄ちゃんに腕を掴まれた。

にこっ、と微笑むその顔は、怒りに満ちていた。


田口は角を曲がって見えなくなってしまった。

それを見たお兄ちゃんはあたしの髪を掴み、掴む腕の力を入れた。


「痛いっ……」

「結菜、なに口利いてんの?俺以外の男と口利くなって言ったよな??」

笑ってる。

目に涙が溢れる。

助けて。

「いやっ……」

「結菜」

近づく顔。

「いやあああぁぁぁ!」

あたしは叫んだ。

家じゃ無意味な行為だけど、外なら誰か来るかもしれない。


「菊池っ!?」

田口っ!

「田口っ、助けてっ」

あたしとお兄ちゃんの光景を見て、田口は愕然としている。

いや、田口にはお兄ちゃんじゃなく、“彼氏”と“彼女”か。


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