俺だけの愛しい妹
田口はお兄ちゃんに殴りかかろうとした。
お兄ちゃんは自分の後ろにあたしを押し、田口を殴った。
田口は地面に倒れこみ、立とうとしたが、お兄ちゃんがそれを阻止した。
もう一発田口を殴る。
田口は動かなくなってしまった。
気絶したのだろうか。
「田口っ!田口っ!!」
呼んだが起きない。
「田口っ!たぐっ……きゃっ」
腕と口を押さえられ、お兄ちゃんは言った。
「呼ぶな。いくら結菜でも、俺以外の男の名前呼ぶと、許さないよ?」
あたしを止めるには、その言葉で十分だった。
叫べば、人がきたかもしれない。
だけど、できなかった。
田口を置いて、あたしは連れて行かれた。
連れて行かれた場所は、家。
自分の家。
乱暴にドアを開けられ、すぐにベットへと押し倒される。
お兄ちゃんの顔は笑顔とも、無表情ともつかない顔をしていない。
ただ、怒りだけが滲み出ていた。