笑顔

刻一刻と

 




「むぅ…退屈」

「勉強終わってないだろ! ほら、一次方程式の(1)から解けよ」

「…はーい」

仕方がなく紙の上にシャープを走らせる。鬱陶しいこの上無い。なんで勉強なんかしなきゃいけないんだろ。

「分かんないなら俺がちゃんと教えてやるからさ」

「はーい…」

雄大は呆れたように溜め息をついて、項垂れている私に救いの手を出してくれた。

「…ったく、しゃーねぇなぁ。問2まで全部真剣にやって解けたらどっか連れてってやる」


疲れ切って光をなくした瞳に一瞬で輝きが灯った。雄大のこんなとこが私は大好きだ。わっと上がったテンションに任せ口からすらすらと言葉が出る。


「うん!絶対だからね!」

「そ・の・か・わ・り・! ちゃんとやれよ?」


優しい瞳で私を捉えてにっこりと微笑み、私も同様に微笑み返す。


「当ったり前!!!!」


さっきと同一人物とは思えない速さで問題を解いていく。シャーペンはまるで私の一部かのように動き、このあとのデートに胸を踊らせた。


「おー佳織、頑張れ頑張れ」

なんて隣りで雄大が笑ってる。
それが私の幸せだ。




「できたよ!」

「んー?」


どれどれ、とプリントを手に取り一つ一つ確認していく。ふむふむなんて何処かの教授を真似てるみたい。


ぱぁと雄大が笑った。



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