笑顔
殺したようなもんじゃん、小さくぼやいたのは誰一人聞き取ることはなかった。
「皆さん…佐野さんに、黙祷を捧げましょう」
教師、全校生徒が顔の前で手を合わせ目を閉じる。俺だけが、何もせず立っていた。立ってるのが不思議なくらいだ。嗚呼…涙なんて出ない。人は本当の絶望に合うと泣けないもんなんだな。
以外にも冷静だ。
教室では担任からまた詳しい話をされた。
本当に残念でした。皆さんも気をつけて下さい。
その一言で話は終わり、今日の日程に話は変わる。
残念でした、か。
憐れか? 佳織は憐れな女子生徒。そんなあっさり終わっちまうのか?
佳織は憐れなんかじゃない。
可哀相なんかでもない。
佳織は…佳織は、幸せでいれたんだ。
少なくとも通り魔に遭う前までは。
俺が、殺すまでは。
「…ちょっと、村上いいか?」
佳織の担任が俺を呼んだ。
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