笑顔

 



「……なんですか」


ぶっきらぼうに答えれば、まあ来いと相談室まで連れてこられた。


「…今夜、通夜があるんだが…学校代表として出席してやってくれないか?」


先生は俺達が付き合ってたこと知ってたんだろうか。断る理由も行かない理由もない。


「はい、分かりました。」


「そう言ってくれて良かった。学校が終わったらそのまま行くから放課後教室で待っててくれな」


佳織、佳織。


「…一つだけ聞いてもいいですか」


「なんだ」


「佳織は…苦しまず逝けたんですか?」


先生は暫く黙り、口にするのも辛そうに絞るような声で俺に向かって言う。生徒に、しかも恋人だったやつに言うのは辛いのだろうと思った。


「…ああ、心臓を一刺し、即死だったそうだ。」


嘘だ。


「良かった…佳織は最後まで幸せだったんだな」


きっと苦しんだんだな、佳織。
ごめん。




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