わがままモデル王子は危険な香り
少しずつ前へ

莉緒の入院

監禁されていた部屋から王子に肩を支えられながら出ていく

王子が昔、母親に監禁された部屋

王子はどんな思いでこの部屋に足を踏み入れたの?

苦しかった?
辛かった?

できるならもう見たくなかった?


ゆっくりと階段を降りる

一階の奥の部屋から怒鳴り声が聞こえてくる
たぶん達明だ


私の体がびくんと恐怖で跳ね上がった
王子が強く私の肩を掴んでくれた

「大丈夫、ヤツは来ない
あいつはもう人間じゃない
獣だよ」

王子が耳もとで囁く

「ほ、んとに来ない?」

「ああ、警察がくるまであのままだ」

あのまま?
私は後ろを振り返る

達明が見えるわけじゃないけど、体が動いていた

「ガムテープで手足を固定して椅子に括りつけてある」

「そこまで?」

「じゃなきゃ、俺らが殺される」

「ころ……」

「あいつの精神はぎりぎりだな
悪魔に魂を売り渡したんだ
もう戻れない

尋常じゃないパワーを発揮できるけど
ああなったらもう普通には戻れない
ずっとあのままだ」

小さな声で王子が言った

誰を思い出しているの?
お母さん?

お母さんも……なんて聞けない


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