わがままモデル王子は危険な香り
「はあ? おい…え?」

私と戸倉さんの間に立っている王子が眉間に皺をよせていた

状況を飲み込めていない王子を見る限り、これは戸倉さん一人の計画だ

王子は何も知らないし、戸倉さんとは体の関係はないと思う

王子は私の顔を見ても焦ってなかった

普通、抱いた女が室内いる
もしくは抱こうと思っている女が部屋にいる状況のときに


昔の女(…と思ってくれていたら嬉しいけど)が突然やってきたら
激しく動揺すると思う

私は顔をあげて戸倉さんを見た

「お仕事のお話があると約束してましたよね?」

私はにっこりとほほ笑んだ

負けたくない

すでに女の色気で負けている

なのに気持ちまで負けてたら、本当に敗北してしまうから

気持ちは絶対に戸倉さんには負けない

「ごめんなさい
ちょっと取り込み中なのよ
しばらく待っててもらえる?」

「わかりました
上の階にラウンジがあったみたいなのでそこで待ってます」

私は戸倉さんから視線を外して、王子の顔を見た

王子は戸倉さんの行動の意味を理解したらしく、怖い顔をしていた

「桜嗣さん、大切なお時間を潰してしまって申し訳ありません」

私はお辞儀をすると、廊下を歩き始めた


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