わがままモデル王子は危険な香り
がちゃりと鍵の捻る音が聞こえた
私はびくっと身を縮めると、玄関のほうへ振り返った

「明日は7時でいいんだろ?
もう帰れよ」

王子の不機嫌な声が聞こえてきた

「まだ仕事の話があります」

「話し足りない仕事内容ならメールにしてくれよ
いつも言ってるだろ
メールで送ってもらえば、必ず確認するって」

王子は戸倉さんと話をしているみたいだった

「莉緒?」

玄関で王子が私の名を呼んだ
驚いているような声だ

靴を見てくれたのだろう

「莉緒、いるのか?」

王子の足音が聞こえた

居間に入ってくるのがわかると、私はソファから立ち上がった

「おうじ」

「莉緒? どうしたんだ
目が腫れてる」

王子は私に近づくと、腰に手をまわしてくれる

そして腫れている目にそっと触れた

「何か、あったのか?」

「高野さんが来てるって?」

戸倉さんの怖い声が聞こえた

戸倉さんも居間に入ってくる

「桜嗣は明日、朝が早いのよ」

戸倉さんは手帳を確認しながら、きびしい口調で言った

「戸倉、帰れよ
仕事の内容ならメールしてくれ」

桜嗣が戸倉さんを睨んだ

戸倉さんはため息をついてから、玄関に向かっていった
< 185 / 212 >

この作品をシェア

pagetop