わがままモデル王子は危険な香り
王子が出発してすぐに、戸倉さんから電話がかかってきた

『あんたのせいで首になったじゃない
私と桜嗣は付き合ってたのに』

憎しみのこもった低い声が携帯から聞こえてくる

私はごくりと唾を飲み込んだ

「あの……私には付き合っているようには…見えませんでしたけど」

『どうして?
私みたいな女のほうが、男は好きでしょ?
整形したのよ
桜嗣のために……お金をかけて』

お金をかけて?
そこまでして桜嗣に愛されたかった

その想いが強すぎて……ってこと?

それは時として犯罪につながるのに

「嘘の報道を流したのは貴方だって聞きましたけど」

『嘘?
本当のことを話しただけよ
だってそう話してたもの』

「話していた? 誰が?」

『多田野って人
昨日、マンションの下で会ったの
それで良い情報があるって言うから…話をしたわ
面白い話しだったし、そのまま一緒にマスコミに流したの

付き合ってたんでしょ?
多田野って人と
昨日、桜嗣に抱きつきながら言ってたじゃない』

「……そんなぁ」

私は大きく息をついた

『桜嗣、怒ってたわね
別れるのも時間の問題じゃない?』

「桜嗣はすべてを知ってくれてます
理解もして、私と付き合ってるんです」

『あら…本当に?
フランスにいた2年間、あなたが日本のどう過ごしていたかなんて知らないじゃない
どんな人と付き合ったか…なんて
面白いわぁ
桜嗣があなたを疑う姿が……』

そう言うと、戸倉さんが電話をきった

どういうことだろうか?


桜嗣がフランスに行ってた2年間は誰とも恋愛をしてない

戸倉さんは何をしたの?


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