わがままモデル王子は危険な香り
「あんたって最低」

撮影場所に向かおうと、地下駐車場を歩いていると柱の陰から声が聞こえた

振り返ると髪を振り乱して走ってくる戸倉さんがいた

ボディガードが気がついて、戸倉さんを抑え込んだ

手に持っていた包丁が地面に落ちた

「桜嗣をどうやって垂らし込んだよ!
どんなにあんたの情報を流しても、桜嗣は何も行動しないじゃない
全く動じないなんてあり得ない

それにマスコミにあんたの情報を流しても、どの局でも取り合わなくなったのよ
何をしたのよ!

こうなったらあんたを殺して、私が桜嗣の彼女になるしかないじゃないの」

ボディガードに抑えられたまま、戸倉さんは大声で騒いだ

足をばたつかせて、戸倉さんは暴れる

ボディガードは歯をくいしばって、暴れる女を抑え込んだ

「なーんてね」

戸倉さんはニヤリと私を見て微笑んだ

まるで魔女のように


「室長、あぶなっ……!」

坂本さんの大声に私は振り返った

目の前に多田野先生が覆いかぶさってきた

私は地面に背中を打った

「莉緒、やっと触れたよ」

多田野先生の息が、顔にかかった

多田野先生の腕を上にあがるのがわかった

手にはナイフを持っている

え?
刺されるっ!



私は目をつぶった……
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