わがままモデル王子は危険な香り
胸に痛みが走る

……でも何かが刺さった感触はなくて

何かにたたかれたような感じだ

私は目を開けてナイフを見つめた

ナイフには赤いリンゴが刺さっている

え?

なんで?

私の脳内は真っ白になった

「う~ん、私の腕は鈍ってないね」

紫音さんの声が響いた

多田野先生の背後に大きな影ができると、先生がうめき声をあげた

海堂彰吾さんが多田野先生の腕をねじあげたのだ

「いてっ…はなせっ…」

「できない」

単語で海堂さんはつぶやくと、駐車場の柱に多田野先生を抑えつけた

「バスケで鍛えたコントロールがこんなところで役に立つなんて意外だったな」

紫音さんはほほ笑むと私に手を差し出した

「どうして……」

「桜嗣に頼まれた
桜嗣は仕事で直接、撮影場所に行かなくちゃだから
時間に余裕があるなら、莉緒さんの顔を見に行ってくれって
仕事場の様子を知りたいって心配してた

そしたらおっさんが襲いかかろうとしてたからオヤツに食べようと思ったリンゴを投げちゃった
あ~あ、食べモノが勿体ない」

「紫音さんって凄いっ!」

私は紫音さんに助けられながら、立ち上がった

「警察」

海堂さんが紫音さんに呟く

「はいはい、110番するってば」

紫音さんは携帯を出した
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