わがままモデル王子は危険な香り
「…うぇ」

トイレの水の中に、夕食がぷかぷかと浮かんでいた

シャツにパンツ姿でトイレで吐く私は、なんて格好悪いんだろうか

「いたっ……」

また傷口が開いたみたい
痛みが走る

私はぐったりとしたまま、トイレの床に座り込んだ

「おい、大丈夫か?」

王子がトイレに入ってきた

「だ…め…入っちゃ…」

王子は気にせずトイレの中に入ると、吐いたものを見てから流した

「あんなに激しく動くヤツがいるかよ
走ったから…ほら、また傷口が開いた
止血するから立て」

王子が私を支えてくれる

私はよろよろしながら歩くと、ソファに戻った

血が足を伝う

トイレのマットが血で汚れていた

「ごめ…な、さい」

「は?」

「私…よご…し、て」

「気にするな
まずは止血だ
それからなんか食えよ」

王子は傷口に清潔なガーゼを載せると、ぎゅっと傷口を押した

「うっ…」

「少し我慢しろ」


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