わがままモデル王子は危険な香り
「腹にナイフのような鋭利な刃物の傷跡
男女間の下の話になると催す吐き気
つい最近、男女間のトラブルに巻き込まれたって考えるのが妥当だ
それにあんたはマンションから一歩たりとも出ていない
食材の買出しはネットだし
ちょっと買い物は社長が行っている
外に出られないような怖い思いをした
あるいは外に出たら襲われる可能性がある…そうおのずと答えが出てくる」

王子が私の肩に手を置いた

「黙ってるよ
あんたが経験した過去の出来事
どうせ社長だって
全部は知らないんだろ?」

「貴方も知らないはずです」

「そうかな?
多田野達明って名前、知ってる?」

私の体がびくっと反応した
聞きたくない名前だ

「確か、あんたが通っていた大学の助教授で
ゼミの先生だったんだって?」

王子が私の耳元で囁いた

「多田野って男
離婚したらしいよ
探偵雇って、あんたを探しているってさ」

「う…嘘よ」

「嘘じゃない」

「嘘だわ
適当なことを言って私を追い詰めるのね
そうでしょ?
恐怖心で私を抑え込んで、好き勝手にしたいんでしょ?
好きな女が抱けなくなったからって私を無茶苦茶にして楽しむのね
そして心の中で笑うのよ
ざまあみろって」

私はこぼれてくる涙を指で拭いとった

「好きにすればいいわ
抱きたければ、抱けばいいのよ
こんな体、私はいらない」

「追い込んでるのは自分自身だろ
もっと大切に扱えよ」

王子がそう言うと、私を広い胸で包み込んだ



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