わがままモデル王子は危険な香り
おばさんは他に仕事があるから、王子の家を後にした

私と新城さんは、居間で静かに王子が浴室から出てくるのを待った

私はソファに座り、新城さんはダイニングにある椅子に座って、スケジュールの確認をしているようだった

「貴方は三木さんの代わりでマネをしていたんですよね?」

呆れた声で新城さんが質問にしてきた

「三木さん?」

「はあ…桜嗣の前のマネの名前です
そんなことも知らないんですか?」

すごく迷惑そうに新城さんが口を開く

「すみません」

「社長の親戚だか何だか知りませんけど
他人に迷惑をかけるようなことしないでいただけませんか?
私は二岡の専属マネなんです
桜嗣が女に軽いことを知ってますよね?
マネがあんな写真を撮られるような恥をかいて
それで一緒に暮らしてる?
馬鹿ばかしい
桜嗣に抱かれたくて、三木の代わりにマネになると
社長を言いくるめたんですか?
とんでもない女ですね」

新城さんの口からポンポンと言葉の刃が飛んできた

そんなつもりはない
理由があっておばさんが私を預かってくれて、外に出るのが怖い私にできる仕事を、与えてくれているだけだ、と

新城さんに言いたい

言いたいけど
何と言っていいのかわからない

ただただ苦しくて、目頭が熱くなるのを必死に抑えていた

泣けばきっと

『女は泣けば済むと思ってる』なんて
言われそうで……
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