わがままモデル王子は危険な香り
「莉緒っ!!」

閉まっていく自動ドアの隙間から、おばさんの声が聞こえた

振り返るとおばさんがエレベータから降りてきたところだった

私を追いかけてきてくれた?

何で?

「おば……」

「行かせないよ!
莉緒は私のモノだ」

達明の腕が私を強く引っ張った
肩の関節が抜けてしまうのではないかと思うくらい

達明の引っ張る力は強かった

「痛いっ」

「車に乗れ」

後部座席に投げ込まれた
私は椅子に頭をぶつける

顔あげたときにはもう車のドアは閉められた

追いかけてくるおばさんの必死な顔が見える

「おばさんっ!」

私は窓に両手をつけると叫んだ

達明が運転席に乗り込むと、エンジンをかける


あと一歩
あと一秒

おばさんが後部座席のドアに手を伸ばしかけたところで、達明がアクセルを踏んだ

窓からおばさんの姿が見えなくなる

後ろの窓を見ると、呆然と立ち尽くすおばさんの顔が見えた


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