わがままモデル王子は危険な香り

多田野の別荘

達明の別荘についたのは深夜1時過ぎだった

山の中にある別荘地
何十件とあるうちの一軒だった

表札には「一之瀬」と書いてある

たぶん達明の奥さんの旧姓だろう

元妻の別荘だと言っていたから


「くそっ、あいつ、鍵をかえてやがる」

達明が持っている鍵では玄関のドアが開かなかった

達明は私の手を握ったまま、ドアを足で蹴った

何度も、何度も
ドアが壊れて開くまで蹴り続けた

なんかどうでもよくなってきた
車に乗る前は、達明が怖かった

車に乗ったら、自分が情けなくなって


今は、どうでもいい

目の前にいる男は私の知らない男で、この男とこの山奥で生活をする

どんな生活になるか
全く予想がつかないけど

監禁状態にされて、この男が抱きたいときに、私が抱かれるんだ

私の処女は王子ではなく、達明によって奪われる

そういうことだろう


少し前なら、達明に処女をあげることを喜んでいただろうに

今は……何にも感じない
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