わがままモデル王子は危険な香り
書き手の男の子とその母親の記録が淡々と書きつづられていた

セックスにたいする嫌悪
父親の裏切りたいする怒り
母親の異常なまでの執着心

毎日の日記ではないけれど
思ったことをそのまま記録してあるノートだった

読んでいて心が苦しくなる

そして3年前の1月23日を最後に男の子の記録は無くなっていた

たぶん
この部屋から出たのだろう

どうやって出られたのかは知らない

今現在
どんな生活を送っているのか、読み手の私にはわからない

このノートには彼の名前は記録されていない


日記を読み終わると、外が明るくなっていた

窓から見える太陽の位置が高い

真昼くらいだろうか

マンションを出てから約一日がすぎた計算になる

おばさんは心配しているだろうか

桜嗣は……

外の情報は遮断されている

携帯も持っていない

達明は部屋から出してくれない限り、私はここで一生を過ごすのだろう

このノートを書いた少年と同じように、私はここで毎日を過ごすのだ
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