わがままモデル王子は危険な香り
足音が聞こえてきた

一人ではなく
二人?

言い争う声も聞こえる

そしてその声は、私のいる部屋に近づいてきていた

「知っているのよ!
ここに莉緒さんを閉じ込めているんでしょ?」

女性の声だ
聞き慣れていないけど、聞き覚えのある声だ


達明の奥さん

そう!
私を刺したときに叫んでいた声と同じ声だ


「お前には関係ない」

「出しなさい! ここは私の別荘よ」

「違う、ここは私のだ
お前はこの別荘を嫌っていたじゃないか
だから私にくれると」

「あげるなんて一度も言ってないわ
忌まわしい場所だど言ったけど、ここは一之瀬家の土地よ!
一之瀬家の財産よ」

「出ていけ」

「出ていくのは達明
貴方のほうよ
ここは私の土地よ
不法侵入で訴えるわ」

「訴えるだと?
やれるもんならやってみろよ」

達明と達明の奥さんが争う音が聞こえてきた

女性の悲鳴
激しい足音

静かになったと思ったら、私のいる部屋のドアが開いた

髪を掴まれている達明の奥さんが、部屋に投げ入れられると、達明が部屋のドアを閉めた

達明の顔はまるで、悪魔のようで、人間の顔には見えなかった
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