わがままモデル王子は危険な香り
ドアの向こう側が騒がしくなった

何か争うような声が聞こえる
私は立ち上がると、ドアの外の音に集中した

「覚えてたのね」

ぼそっと桜稀さんが呟く

「え?」

「たぶん、弟よ」

「ある人って桜嗣よ
桜嗣から電話があったの
貴方が達明のところに行ったって」

桜稀さんがほほ笑んだ

王子が?
ここに来てくれた?

だってまだ海外のはずじゃ…
ファッションショーの仕事があるはず

リザっていうデザイナーといちゃついてたし
私が達明のところに行ったって気にするような……

階段を駆け上がる足音が聞こえた

私の心臓が早鐘を打つ

王子が来てくれた…と思う心と、違うと否定する心が、痛いくらいに葛藤している


足音はすぐ近くまで来ていた
< 97 / 212 >

この作品をシェア

pagetop