好きになる瞬間

１．

いつもの遊び仲間と久しぶりの遠出をした。

途中、ワイン工場に立ち寄り今晩泊まる宿で仲間たちと飲む酒を買い、宿へと車は走らせた。

ちょうど宿には夕食に間に合うように到着した。久しぶりの温泉に食事も酒も進みほろ酔い気分でイイ気持ちになっていた。

それまでの彼女には、彼氏もいない、いや、いないのが当たり前。気の合う仲間と遊ぶのが一番だし、寂しいなんて一度も思ったことのないキャリアウーマンであった。

この日も仲間たちと大いに盛り上がり楽しい一日が過ぎて行った。

その日の深夜に彼女の携帯にメールが入った。彼女もその日は、旅の疲れで眠かったし、ワインを飲みすぎていたので、そのまま寝てしまった。

次の日仲間たちとそのメールを見た。
「見たことないアドレスだね。いたずらだよ構わないほうがいいよ。あぶないからシカトしてるほうがいいよ。」口々にみんなが言ったので構わないでいた。

ただ一言『メルトモニナリマセンカ？』彼女の生活の中でまったく縁のない言葉だった。

彼女にとって携帯は仕事だけのものであり、メールといえばパソコンでやはり仕事のやり取りをする程度。

それだけに彼女にとってなぜか新鮮な気持ちが込み上げたのである。

「少しぐらいならメール入れちゃおうかな？」彼女は軽い気持ちで返事を出した。

「ワカリマスカ？」すぐに返事は返ってきた。

「ワカルヨ！ウレシイナァ！」えっ？何で？わかったんだろう？

「オレノナマエハケンイチキミハ？」

「ワタシノナマエハナツコ。」

「トシハイクツ？オレハ２４ダヨ。」

やばい若すぎるじゃんもうメールするのをやめた。

話ついてけないよ。

すると、「ドウシテメールクレナイノ？」まずいここは正直に言ってしまえばメールは来なくなるだろう。

「ゴメンネ。ワタシノトシハ３９ダヨ。」

「ウレシイ！トシウエノヒトトメールシタカッタンダ！」えっ？一回り以上も違うのにマジでいってんの？なぜ？彼女は今まで味わったことのない出来事だった。

そしてすでに始まっていたのである。しかし、そのことに彼女はまだ気がついていないのであった。