桜×恋


目元が緩んで一気に優しい表情になる。


いつの間にかさっき男の手を遮っていたはずの私の手は


男の手に包まれていた。


「ちょ、はなしっ」


「桜」


「……え?」


「俺は、桜。だよ」


『さくら』


それって下の名前?それとも名字?


普通ならそんな言葉を投げかける場面なのに


私は男の名前に、なぜか納得してしまった。


桜、これがこの男の名前で、それ以外の名前なんてありえない


そう感じてしまった。


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