桜×恋
もうやだ帰る。
桜を正面から睨み付け、すぐ背中を向けた。
……ざまみろ。
睨んだときに桜の表情が焦ったように見えてなんか勝った気分。
そのまま歩き出す。
「ちょっと待ってよ」
その言葉と掴まれた腕に、昨日もこんな事あったな、なんて考えて
振り返り桜を見て、その考えを否定する。
……焦った顔。
「ちょっとでいいから、お話しよ」
今度はさっきの表情はどこに行ったのか、というくらい綺麗な笑顔。
「お話って…」
「…少しで良いから」
今度は寂しそうな笑顔。
「………少し、だからね」
花のように開いたり萎んだりする桜の表情に
私は惑わされる。