桜×恋
「離してよ」とか言いたいのに
言葉が出てこなかった。
「急いでる?」
真っ黒な目で見つめながら話しかけてくるから
逸らすことなんてできない。
「急いでは、いないけど」
「じゃあお話ししようよ」
「見ず知らずの侵入者とは話すことない」
ちょっと酷い言い方したかも。
と思ったけど、男は気にした様子もなく、
「侵入者同士積もる話があるかもよ?」
笑顔で言うこの男は本当に何なんだろう。
「だから私は侵入者じゃない」
「普通携帯くらいで夜の学校来るかなぁ」
「来るよ!」
大きな声で言った私に男は驚いていた。