桜×恋



「離してよ」とか言いたいのに


言葉が出てこなかった。


「急いでる?」


真っ黒な目で見つめながら話しかけてくるから


逸らすことなんてできない。


「急いでは、いないけど」


「じゃあお話ししようよ」


「見ず知らずの侵入者とは話すことない」


ちょっと酷い言い方したかも。


と思ったけど、男は気にした様子もなく、


「侵入者同士積もる話があるかもよ?」


笑顔で言うこの男は本当に何なんだろう。


「だから私は侵入者じゃない」


「普通携帯くらいで夜の学校来るかなぁ」


「来るよ!」


大きな声で言った私に男は驚いていた。


< 6 / 41 >

この作品をシェア

pagetop