キャンディ


ページを捲った瞬間に当たった慶にぃの手が冷たくて、咄嗟にそんな言葉が口から出た。


あたしの言葉に、慶にぃだけでなく貴にぃもこっちを見てくる。



「慶ちゃん……?」


なんでそんな呼び方になっちゃったのか、自分でもわからない。


「だって真衣ちゃんって言うから、つられて…」

自然と言い訳のような言葉を発してるあたし。



「あっははははは!!」


爆笑する二人。


「慶ちゃん?
何、慶ちゃんって。誰目線だよ?」


貴にぃが、やたらとウケながらつっこんでくる。




「笑わないでよっ」


なかなか笑いが治まらないので、あたしはそう呟いた。



「ごめんごめん。
じゃぁこれから慶ちゃんでいいよ?」


だいぶ笑いの治まった慶にぃは相変わらずの口調。



「いい。そんな呼び方しないもん」


ここまで笑われたら、もう呼びたくない。



そう思ったけど、その後。

何故かあたしは慶にぃのことを慶ちゃんって呼ぶようになった。




< 11 / 224 >

この作品をシェア

pagetop