キャンディ
ページを捲った瞬間に当たった慶にぃの手が冷たくて、咄嗟にそんな言葉が口から出た。
あたしの言葉に、慶にぃだけでなく貴にぃもこっちを見てくる。
「慶ちゃん……?」
なんでそんな呼び方になっちゃったのか、自分でもわからない。
「だって真衣ちゃんって言うから、つられて…」
自然と言い訳のような言葉を発してるあたし。
「あっははははは!!」
爆笑する二人。
「慶ちゃん?
何、慶ちゃんって。誰目線だよ?」
貴にぃが、やたらとウケながらつっこんでくる。
「笑わないでよっ」
なかなか笑いが治まらないので、あたしはそう呟いた。
「ごめんごめん。
じゃぁこれから慶ちゃんでいいよ?」
だいぶ笑いの治まった慶にぃは相変わらずの口調。
「いい。そんな呼び方しないもん」
ここまで笑われたら、もう呼びたくない。
そう思ったけど、その後。
何故かあたしは慶にぃのことを慶ちゃんって呼ぶようになった。