キャンディ

――「真衣ちゃん、これ貸してくれるっ?」


勢いよく部屋のドアが開いて、奈津美さんが顔を出した。


「あ、慶もいたんだ?…って、2人ともどうかした?」



あ…あぶなっ……



咄嗟に反応して体を離したから、あたしも慶にぃもおかしな体勢になっている。



「や…何にもないです……。」


「あ、そう?」

「えっと、何か言うことがあったんじゃないの?」


「そうそう。真衣ちゃん、これ使ってもいい?」


奈津美さんが手に持ってるのは、あたしが昨日買ってきた入浴剤。


「うん、どーぞ。」

「ありがとう!」


「つーか、ノックぐらいしろよ?」


慶にぃが呆れた様子で言う。


「何?いきなり入られると、困るようなことでもしてたの?」



なっ……



それだけ言い残して、奈津美さんは笑顔で部屋を出ていった。


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