キャンディ
「おかえり、真衣ちゃん!
遅かったじゃない。何かあったの??」
玄関で、奈津美さんが心配そうにあたしを見る。
「ううん。ちょっと、友達と喋ってて…」
あの後、お母さんとどんな話をして、どう別れたのか覚えてない。
自分がどうやって、帰ってきたのかも覚えてない。
ただ頭の中が真っ白で、1秒が1時間のように、時間が長く思えた。
「真衣ちゃん、話があるみたいだったから、みんなで待ってたの。夜ご飯、食べよっか?」
話…
「あたしお腹空いてないし、やっぱやめとくね。待たせちゃったのに、ごめんなさい。」
あたしは、そのまま階段を上がろうとした。
「待って。なにか、言いたいことがあったんでしょ?」
「何だっけ…忘れちゃった。」
奈津美さんの顔も見ずに、自分の部屋に入った。