キャンディ
「私達は…
異性だけど、何でも話し合える仲だったの。本当に気が合って、周りからもたまに怪しまれた。
でも、私と智裕は恋愛に発展したことはなかった。
やがて智裕が結婚して、私達はいつの間にか会う機会が少なくなった。
そんなときに、私は英彰と喧嘩してしまった。
頼れる人が智裕しかいなくて、智裕に英彰とのことを、毎晩相談した。
ただ、英彰と仲直りがしたくて。
智裕は、熱心に話を聞いてくれて、慰めてくれたりアドバイスしてくれた。
本当にそれだけだった。
肉体関係をもつこともなければ、友達以上のことをしたこともなかった。
たったの1度も。
だから、妊娠したことがわかったとき、迷わず英彰との子供だと思った。
なのに、それを英彰に告げると、『誰の子供かわからない』って言われたの。
『俺と喧嘩していた間に、会ってた男との子供かもしれない』って。
悲しかった。
どんなに訴えても、信じてくれない。
だけど、英彰は『誰の子供でも俺が育てる』って言ってくれた。
信じてはくれなかったけど、その言葉が何よりも嬉しくて…
信じてくれない悲しさと、そんなふうに言ってくれた嬉しさで、思わず涙が出てしまったのを覚えてる。
そうして、私は英彰との子供、慶を産んだの。」