キャンディ
―――「真衣っ」
「えっ?」
思い出に浸っていると、慶にぃに名前を呼ばれた。
「とっくに終わってるよ?」
自分の手元を見れば、線香花火は消えていた。
「あ、ほんとだ」
「どしたの?ぼーっとして」
「ううん…」
最後の一本も、火が落ちた。
「…帰ろっか」
「うん」
慶にぃといる時はいつも満面の笑顔なのに、今日はなぜか…二人とも静か。
何となく切ないような気持ちになるのは、この線香花火のせい?
慶にぃが傘を差して、あたしをその傘の中に入れた。
雨だからか、夏なのに辺りはすでに暗かった。