好きだよって言いたいんだ
元から、期待なんてしていなかった。
アタシが求めているのは、愛だった。
でも、付き合った男達は体を求めていた。
ヤれれば誰でもいい感じ。

求める物が同じ男もいた。
でも、過度過ぎて愛を与えられなかった。



咲にだったら、アタシは何でも与えられる。
そう思えた。
でも、現実はそんなに甘くなかった。


信じた事の無い神様は、簡単にアタシの願望を打ち砕いた。

アタシは、本当に好きな人とさえも気持ちを繋ぐ事は出来ないのだ。

「……咲」



え…?

突然、口を突いて出てきた名前。
理由は分からないが、名前と同時に涙も流れた。

咲。大好きな咲。
優しい咲。色んな所に気が回せる咲。


どしても助けてって時は、いつでも相談相手になってくれた咲。


もう、そんな事が出来ない。
もう、二度と…戻れない。

そんな事を思っていると、一筋の涙。


「……あ……」
涙なんて流す資格無い。
アタシが悪いのに。何泣いたりしてんの。


自分を罵っても、涙ばかりが溢れる。
虚しさと涙だらけのアタシは、母が帰って来るまで泣いていた。

ガチャッ


「秋?」

…お母さん??




「もの凄い泣き声だね~」と一言。
母は天然というか、変わり者というか、
とにかくヘンな人なのだ。

人が真剣に話している時に、
どこから持ち出したのか、
カメラを調達して話をしている人の顔を撮影し、「変な顔~!!」とおちょくる。

紹介した通り、母は典型的な変な人だ。
そして、何を考えてるのか分からない人。





「…うるさいよッ」

母は、よく分からないと言った顔をした後、こんな事を言った。

「アンタの泣き声、鳥が苦しめられてるみたい。」









…………






どんな例えだ。

その日は、母の変な発言で涙が止まった。



お母さん、ある意味でありがとう。
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