Tokyo Dolls
朝目覚めると、Jの姿はどこにもない。

広い部屋に一人ぼっちで取り残され、どうしようと途方にくれ携帯を開くと不在着信の文字。上総(かずさ)さんからだ。

窓に近づくと、外は雨が降っているようだった。

携帯の発信ボタンを押す。

『Pupu...Pupu...』

数回目の呼び出し音がして

『・・・もしもし』

と、上総さんの声がした。

『・・・もしもし』

『どうだ仕事は?』


『・・・(さすがプロだ)』

昨日のJの言葉が頭をよぎった。


『何かあったのか?』

『いえ、何も・・・』

『そうか、それならいい。お前には早いかとは思ったが“社長”の要望でな・・・』

『・・・そうですか』

『・・・』

少しの沈黙の後、電話口の向こうから上総さんを呼ぶ誰かの声がして『また連絡する』そう言って電話は切れた。


『・・・(“社長”)』

私をこの暗い暗い底なし沼に突き落とした、昔の恋人。



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