Tokyo Dolls

Ⅱpretender's love

携帯電話を握り締めたまま、窓ガラスに背中を向けてしゃがみ込む。

一人ぼっちの広い部屋と雨、思い出したくない記憶が断片的に甦ってくる。

『(雅貴、嘘だよね)』

『(・・・・・・)』

『(だって、愛してるって)』

『(・・・お前を愛していた訳じゃない)』

そういって彼は、温かさなんて微塵もない冷酷な目を私に向けた。

『(雅・・・)』

去ってゆく、彼の背中が扉の外へ消えていった。



『(キュ、キュッ、ザーァ)』

冷え切った心を温めるように、服を着たまま熱めのシャワーを頭から浴びる。

あの頃、毎日のように止めどなく流した涙もいまでは枯れ果ててしまった。

ただ心だけは今だに、寂しさにに凍えて、時々凍死してしまいそうになる。


振える体を自分の両腕で抱きしめた。




< 16 / 38 >

この作品をシェア

pagetop